牧口先生は老衰と栄養失調により、73歳で獄死されています。
しかし、健康な男性が70そこそこで突然老衰になるとは考えにくいので、実質的には「餓死」させられたと見ていいでしょう。
事実、当時の牢獄では、若い囚人でも餓死は日常茶飯事でした。
戸田先生は80キロを超える巨漢でしたが、出獄時には40キロ台まで落ちています。肥満体でなかったら、死んでいたでしょう。
常識的に考えると、餓死者の臨終の境涯は、餓鬼界ということになるでしょう。
当時の幹部がことごとく退転したのも、一番は飢餓に耐えられなかったためだと思われます。
しかし、牧口先生は生涯に渡って実験証明を重んじられた方です。
法難を受けた結果、地獄餓鬼の苦しみしか残らなかったとしたら、ただちに「この仏法は間違いだった」と宣言されていたはずです。
しかし、実際は殉教されたわけですから、先生が仏界を湧現させて臨終を迎えられたのは間違いないと断言できるのです。
すなわち、当時の牧口先生にとっては「獄中での餓死」こそ最高の臨終であり、その運命に感謝されていたはずなのです。
もとより先生は70歳を過ぎており、生き延びたとしてもわずか数年です。
牢を出たところで、老いや病に苦しめられ、家族にも迷惑をかけるだけです。
そのような老後に執着するくらいなら、思い切って法華経のために命を捨てるほうが、よほど価値的です。
自らも余計な老いや病に苦しまず、家族にも老後の迷惑をかけずに済んだことは、まさに法華経の顕益だったのです。
そう考えていくと、73歳というのは、長すぎず短すぎず、先生にとってはまさに理想の寿命だったと言えるでしょう。