未来対話より
戦争は、私たちの青春をめちゃくちゃにしました。
わが家は、今の東京・大田区で海苔の養殖・製造をしていましたが、働き盛りの4人の兄が次々に軍隊にとられ、一家の柱である父はリウマチを患い、家業は傾いてしまいました。
幼い弟や妹もいるので、私は家計を助けるため、海苔づくりの手伝いをし、新聞配達もしました。
当時の国民学校を卒業すると、近くの鉄工所で働き始めました。
14歳だから、今の中等部の年代だね。
進学したかったのですが、叶いませんでした。戦争の悪は、若い人から学ぶ機会を奪うことにもあります。
その上、私は結核にかかり、戦時中なので、十分な治療が受けられず、ずいぶんと苦しみました。
父母が苦労してつくった立派な家は、戦争が近づくと人手に渡り、やがて軍需工場になりました。
引っ越した家も、空襲が激しくなると、強制疎開と言って、また明け渡さなければなりませんでした。
ようやく、おばの家の敷地に建て増しをして、いよいよ明日から、そこで暮らせるという夜、突然の空襲で焼夷弾が直撃して全焼してしまったのです。
全てを失いました。
終戦から2年が立とうとしていた5月、ただ1人、消息不明だった一番上の兄の戦死の報せが届きました。
背中を震わせて悲しみをこらえていた母の姿を、私は忘れることができません。
戦争は、始まってしまえば、悲劇しかありません。
「平和を築くための戦争」なんて、私は信じない。
戦争が終わっても、地獄の苦しみは、ずっと続きます。
わが家だけでなく日本中の多くの家族が、その苦しみを味わいました。
アジアでも、世界でも。
ゆえに、戦争は絶対悪なのです。私は戦争を心から憎みます。
これは、池田先生が未来部の友に残した「遺言」です。
戦争とは、一部の老人が、自らの利益のために、若者に殺し合いをさせることです。
戦争は青年の未来を奪い、家族を生涯に渡って苦しめます。
そこには断じて正義など存在しません。
戦争は「絶対悪」であるという師匠の思想を、世界に広めることが、われら弟子の使命なのです。