自公連立政権は、財政再建を後回しにして幼児教育の無償化を優先させる方針ですが、これについて野党やマスコミは批判を加えています。
しかしこの議論には「財政再建によって経済にどんな影響が生じるか」についての考察がすっぽり抜けています。
そこで今回は、思考実験として
「一夜にして日本政府が抱える1000兆円の借金が完済されたとしたら、何が起こるのか」
を、シミュレーションしてみましょう。
世界3位の経済大国日本が、負債ゼロになったなら、世界経済に与えるインパクトは計り知れません。
日本政府すなわち円の信用は、天文学的に高まります。
1ドル10円はくだらないでしょう。
つまり、お金の価値はざっと10倍になり、したがって物価は10分の1に下がります。超デフレです。
喜んだのもつかの間、会社の売り上げも10分の1に落ちるので、賃金も10分の1に下がり、実質的な生活レベルは変わりません。
ただし、以前に組んだローンの額面はそのままなので、実質的な返済額は10倍になってしまうのです!
これは返済できっこないので、日本中に破産者があふれます。家や車を手放す人が増え、デフレはますます悪化します。
その一方、もともとのお金持ちは格安で不動産などを手に入れてますます裕福になり、貧富の差は天文学的に広がることになるのです。
このシミュレーションからわかるのは、
「財政再建を急ぎすぎると、デフレが急激に進行し、国民生活が破壊されてしまう」
という事実です。
なぜか、学者もマスコミも、ここについては触れません。
日本政府には500兆の金融資産があり、企業の内部留保も同等の規模を誇ります。
個人金融資産も、1800兆に達しています。
このような金満大国が、たかだか1000兆の国債を発行したところで、国家破産など半永久的に起こりません。
せいぜい、これ以上借金を増やさないだけで充分であり、1000兆を完済する必要など全くないのです。というか、急に返済したらかえって円高デフレを招き、有害です。
借金を減らすとしたら、インフレが過熱したタイミングがベストです。それも、何世紀もかけてゆっくり返済しないと、経済が混乱してしまいます。
デフレ脱却できていない現時点では、むしろ減らしてはいけないのです。
自公政権が財政再建をあえて先延ばしにするのは、経済学的にも理にかなっています。
借金を甘く見てはいけないが、恐れすぎてもいけないのです。