21世紀への対話より
受胎前に出産を制限し、人間が誕生する可能性を、あらかじめいくらかなくすことは、決して生命の尊厳を踏みにじるものではないと考えています。
まして、そのことによって、発展途上国における恒常的な飢餓状態が緩和される一助ともなれば、それこそ、より現実的に生命を慈しみ尊ぶことになると思うのです。
この推進を考えていかなくてはならないでしょう。
戦後の人口爆発の大きな理由は、カソリックが避妊や中絶を認めず、産児制限には禁欲を推奨してきたためです。
煩悩を悪とみなす小乗経的価値観の限界です。
いつの時代にも、貧困の最大の原因は、無計画な出産です。
戦後、日本が急速に経済成長できた最大の理由は、旧優生保護法で中絶の自由が保証され、子どもを持つタイミングや人数をコントロールできるようになったからです。
中国の経済大国化も、長く続いた一人っ子政策を抜きに考えることはできません。
もちろん、中絶するより最初から避妊したほうがいいに決まっています。
青年に禁欲を強いるような宗教は、21世紀に不要です。
仏法は現実離れした理想主義ではなく、あくまで庶民の現実に根差した生活哲学なのです。