戸田先生は58歳の若さで心不全で亡くなられています。
なぜあれほどの師匠が長生きできなかったのでしょうか?
結論から述べると、それは使命を全うするために必要だったのです。
その気になれば100歳まで生きられる福運がありながら、あえて使命のために早死にの宿業を背負われたのです。
具体的な理由は、3つに大別できます。
まず第一に
「弟子を自立させるため」です。
すでに後継者は育っていました。偉大な師匠がいつまでも健在では、弟子にも甘えが生じてしまいますから、あえて方便現涅槃の姿を示されたのです。
第二に
「長生きしなくても使命を全うできると証明するため」です。
お題目を唱えていても、早く亡くなる同志は大勢います。
彼らは全員、宿命転換できなかった敗北者であり、信心が足りなかったのでしょうか?
決してそうではありません。
人生で大切なのは、使命を全うできるかどうかであり、長生きすることが目的ではありません。
戸田先生は75万世帯を達成され、見事に使命を全うされたのです。
第三に
「大往生の実証を示すため」です。
戸田先生の臨終については、「人間革命」に詳しく記されていますが、致命的な病気も怪我もなく、苦しむことなく眠るように亡くなられています。
直接の死因は心不全であり、いわば自然死です。
現代は、自然死が極めて難しい時代です。
医療の発達に伴い、臨終の苦しみはむしろ長引いています。
ある人は末期がんでのたうち回り、ある人は胃ろうで無理やり生かされ続けます。
これは現代人に共通の宿業と言っていいでしょう。
不自然な姿での長生きが、かえって苦痛を増してしまっています。
戸田先生は、そうなる前に安らかに亡くなられることで、宿命転換の姿を示されたのでしょう。
師匠の生きざま・死にざまに学ぶことは、われら弟子にとって永遠の課題なのです。