21世紀への対話より
いわゆる「植物人間」に対しては、治癒の見込みがない限り、生命存続への努力をムダに続ける必要はないと思います。
なぜなら、その人はすでに人間としての働きを発揮しえない状態にあるからであり、その意味では「死んでいる」といえるからです。
もはや廃人となった人をただ物理的に生かしておくために、高価で技術を要する治療を施すということには、私も反対です。
その技術と費用によって治癒できる、他の病人を見捨てることになるかもしれないからです。
さらにまた、自ら生の終息を選ぶ、その生命自体の権利に干渉しているからです。
現代の医学では、たとえ脳幹が停止した状態であっても、生命維持装置で心臓を動かし続け、点滴で栄養補給し、肉体のみを生かし続けることができます。
もちろん、これは主体的な生命活動と呼べるものではありません。
自力での生命活動が不可能になったのなら、それが本来の天寿です。
これを人為的に引き延ばそうとすることは、宇宙の法則に反しています。
仏法においては、生命は永遠に輪廻転生を繰り返す存在と説きます。
つまり、本来の生死のリズムを乱すことは、次の生をスタートさせる妨げとなってしまうわけです。
肝心なのは生命の「尊厳」を守ることであり、生命を弄ぶような延命は許されるべきでないのです。