腰椎の湾曲がハッキリと確認できます
先日の世界陸上で劇的に引退した「人類最速の男」ウサイン・ボルトが、深刻なハンディを抱えていたことは、今ではよく知られています。
彼の背骨(腰椎)は、生まれつきS字状に湾曲しています。
これは当然ながら、ハードなトレーニングを重ねるうえで致命的な弱点となります。
かといって、手術すれば現役続行は不可能です。
ボルトは背骨への負担を少しでも軽減させるために、トルソー(体幹)をトカゲのように左右に波打たせる、独特の走法を編み出しました。
短距離走のセオリーを根底から覆す、大胆にして革命的な走法です。
これが功を奏して、見事、短距離の世界新記録を次々と打ち立てたのです。
まさしく変毒為薬そのものです。
ボルトの走法は、トルソーの強靭さと柔軟性が必要であるため、今のところ一般化はしていません。
しかし、ずば抜けて速いことは実証されているので、いずれは陸上界のスタンダードになっていくと思われます。
それは、かつてシュガー・レイ・ロビンソンが、現代ボクシングのスタイル(ワンツー&フットワーク)を確立したのと同様です。
まさに、ひとりの青年が100年に1度の技術革命を成し遂げたのです。
ボルトの偉大な記録も、いずれは、新世代の青年によって更新されることになるでしょう。
しかし、障がいを抱えたまま世界新記録を打ち立てたウサイン・ボルトという青年の名は、永遠に忘れられることはないはずです。