二十世紀の精神の教訓(池田・ゴルバチョフ対談)より
マルクスの理論構築の動機が、19世紀の先進工業国であったイギリスの労働者のあまりにも悲惨な状態が、何に由来するのか、どう救済すべきかの解明にあったわけですから、少なくとも動機論的には、マルクス主義の根底にヒューマニズムが横たわっていたことは、疑いを入れないでしょう。
そうでなければ、マルクス主義が、いうところの科学的合理性などよりはるかに強く、宗教的情熱をもって世界の人々に迎えられたはずはありません。
この対談において東西を代表する賢哲は、「人間が全ての目的であって、人間を手段としてはならない」という点で、完全なる意見の一致に至りました。
1000年先まで残さなければならない、まさしく20世紀の教訓です。
池田先生は共産主義国の独裁者と繰り返し対談されましたが、「共産制度も人間を幸福にするための手段に過ぎない」という持論を、いささかも曲げることはありませんでした。
それはあたかも、マルクスが現代に蘇って、弟子たちを巧みに教導するがごとくでした。
共産主義体制も、その出発点にまず「人間主義」がなければ、決して成功することはありません。それはスターリンが、ポルポトが、習近平が証明しています。
全てのマルクス主義者は、マルクスと同じく、まずヒューマニストでなければならない。そうでなければ真の共産主義者ではありません。
党や制度の上に「人間」があるのです。